『洗濯日和』(コピー本) \100-
>ウニエビのいちゃいちゃしてる日常本。全年齢。全10ページ。
小説のウニちゃんサイド「彼と洗濯日和」と、漫画の海老ちゃんサイド「私と洗濯日和」の2本を収録。


以下、ウニちゃんサイドの冒頭サンプル。
「彼と洗濯日和」   ※製本版は縦書きです。

 重たい瞼の向こう側に、ぼんやりと彼を見た気がした。僕に触れてきたその部分に腕を絡め、口付けをし、今しばらくの惰眠を強請った記憶がある。
 けれども今、目覚めてみればどうしたことか。
 消え失せた暖かな掛布に、愛用の枕。シーツを剥がされた冷たいベッド。その上に丸まる芋虫のような僕。
 見知らぬタオルケットが掛けられていたのは、彼なりの優しさなのか。同じ『優しさ』ならば、寝具を奪わずに添い寝でもしてくれればよかったものを。


【今日は洗濯の日か…】

 まだ眠気の残る頭をタオルに埋めると、甘い洗剤の香りがした。
 洗濯の日、というのは不定期でやってくる家中の布が洗われる日のことだ。僕が造った可愛いセクサロイド、彼は、毎日かかさず衛星や気象台から情報を得て天気を予測している。その彼が「今日は洗濯日和だ」と判断した日が『洗濯の日』で、日照条件や風量・湿度が丁度よい日を選んでいるらしい。この日は僕の第二の恋人、ベッドをはじめとする、普段は洗われない布類が軒並み洗濯機へ放り込まれる。きっと今頃、カーテンも家の外ではためいていることだろう。
 僕は窓のない自室からテラスの方角を見た。きっと彼はまだ夢中で洗濯物を干しているに違いない。
 のそり。
 もそり。
 僕は生ぬるいタオルを身に纏ったまま廊下へと這いだした。
 コンクリートの真っ平らな廊下は素足で歩く度にぺたぺたと音がした。
 外の光が入らないここは、日中でも天井の丸い小さな電灯が点いている。そもそもこの家には窓というものがほとんどなく、常に全体の電気が点いている状態だ。
 唯一の例外はリビングで、あの部屋だけはテラスへ出るための大きな二枚窓があった。太陽熱を吸収活用できる彼はそのリビングが一番好きだと言うが、僕は日光なんて眼が痛くなり肌が赤くなるだけなので一番嫌いな部屋である。
 それでも彼がよくその部屋に居座るものだから、最近はリビングのソファーで日差しを避けながら眠ることも多く
なった。
 たまに目の前を通り過ぎる彼に手を伸ばしては、ちょっかいをかけるのが好きだった。くるくると、そんなにこの家にやることがあるのかと思うほど、彼はよく働いた。そうやってちょこまかと動く彼を、腕を絡めたり機体に口付けたりして足止めするのが好きだった。
 仕事中の彼に手を出すと彼はいつも困った顔をする。そして口では「やめてください!」などと言う。
 けれども実際そんなはずはないのだ。
 本当に嫌なら、彼はそのセンサーを以て僕の動きを避けることなんて造作もない。ゆるゆると伸ばされる手や、戯れに触れる口先などは止まっているようなものだ。
 実際、彼は家の中でもセンサーで僕の居場所を感知し、ご飯だとか入浴だとかを勧めに来る。
 避けられるのに捕まっておいて、「やめてください」だなんて。感情面を特化してプログラムしたとはいえ、こんなにも愛らしく育ってくれて僕はとても嬉しい。
 だからつい、いつも手を伸ばしては彼を困らせ、彼の仕事を中断させてしまうのだ。
 明らかに眉を顰めて唇を真一文字に結び、しかし頬をわずかに紅潮させる彼の表情はたまらない。
 僕はそれを思い出して自然と口角を上げていた。


「ふふっ…」

 思わず声も漏れる。
 早く彼に会いたいと思った。